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Festival d'Automne 1
今月はパリにて取材がてらFestival d'Automne(フェスティバル・ドートン
ヌ)関連のステージやエキシビションを悠々自適に見てまわった。フランス
で37年間つづく老舗フェスティバルということで、結構、他にはないユニ
ークな創造物が観られるのではという期待もあったのだが。結果的には私
が目にしたものに関しては総じてクオリティは高いものの、強烈な衝撃波
を食らう、というほどのものは少なかった。
Ryoji Ikeda / Installations 「V≠L」@ Le Laboratoire
アーティスト×科学者の垣根を越えたコラボを主目的に昨年開場した、パリのギャラリー「ル・ラボラトワール」。ここで日本人コンポーザーの池田亮司とハーバード大学の数学理論家ベネディクト・グロスによるインスタレーションが披露されていた。数字を究極美と捉えることから始まり終わる、あまりにミニマルなこのインスタレーション。穏やかな闇に覆われた暗室的空間に厳粛に入室すると、鑑賞者のひざ丈に、4mはあると思われる2枚の巨大なホワイトボードが寝かされている。興味津々にそのボードに近づくと、係員に虫眼鏡を手渡され、0.8mmのミクロ文字で印字されている、無数のデジタル数字を覗き見るよう指示される。説明によると、一枚目のボードには世界で何番目かに大きい700万2300桁の素数が刻まれ( A Prime Number, (2008) )、もう一枚にはコンピューターアルゴリズムでランダムに産出された700万桁のディジットが載るらしい(A Natural Number, (2008) )。素数は数学者にとっては宝石のように貴重なもので、ランダムな数字は無意味なもの。けれども数学的知識の皆目ないこちらにとってはまったく同じ視覚的要素しか伝わってこない。緻密で、シンプルで、エレガントで、不可解、という意味では実に池田亮司らしい作品なのだろうが。コアな池田ファンでもないし、数学オタクでもないこちらとしては、基本的には板に数字が印字されているだけなので「だからなにが美しいの?」と物申したくもなる。ラボラトワール=研究室という名の空間で見せる「アートと科学の境界線に挑戦する」作品としてはふさわしいのかも知れないけれど。個人的には象牙の塔で考案・思考・創作され、こちらが知識武装しなければ伝わらないアートはあまり好きではない。"闇"のなかに寝かされた数字を解読する上記二作品とは対極的に、隣室には、まばゆい"光"の回廊 Spectra III (2008)が展示されていた。

Le Laboratoire
4, rue du Bouloi, 75001 Paris
http://www.lelaboratoire.org
(December 18, 2008)
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