福岡で女論

二月のはじめは、福岡。初乗り290円という驚愕の昭和金額なタクシーに乗りこみ、中洲の屋台で、生まれてはじめて日本を訪れたという英国人中年女性と歓談する。彼女の主観話によると今イギリスでは、ミドルクラス以下の若い男たちが、欧州の「女強男弱化」現象に反し、妙にマッチョ化しているのだという。そしてそれに追随するかたちで女子たちは必要以上に過剰露出なドレスに身をつつみ、きゃっきゃとマッチョな男に狩られることに喜びを感じているのだという。70年代にフェミニズム旋風のまっただなかに身を置いて、女性の権利のために必死に戦ったという彼女は「女があんな服装をして男性に媚びるなんて、私たちはなんのために戦ってきたのよ!」と憤っていたけれど。最近の私は、彼女が語るようなひとむかしまえのフェミニズムにはかなり懐疑的。男女同権は素晴らしいと思う。けれど女が男と1ミリの誤差もなく肩をならべ、色気のかけらもない戦闘服を着こみ、私たちは男と同等のことがなんだってできるのよ、と必要以上に牙を剥くのはなんだかむしろ不自然な気が。とくにフランスに行くと感じるのだけれど、女性たちはやたらめったら突っぱらかっていて、男にノンノンと口答えをし、相手を服従させることで、自分のちっぽけなプライドに高下駄を履かせているような気がする。でも男という生き物は、女にほほえまれ育まれ認められ、はじめて自律できる弱きもの。四六時中ノンと言われ、私のいうことを聞きなさいよ、とあごで使われた日にはーー、その男の雄としての大らかな魅力がひらかないように思う。先月取材した賢女ジュリエット・ビノシュがくしくも語っていたように「女が男を許容すること」は「女の弱さではなく強さ」の象徴なのだ。
ただ話を前出の現代イギリス社会学に戻すなら、だからといって女性が自分の「性」を商品化して、露出過多な服装で、男にそれを売ろうとするのは安っぽい娼婦の行動と変わらない。娼婦になるのも、戦士になるのも、どちらもとっても極端すぎる。それに男からの反動で行動が取られているという意味で、どちらも女として自由じゃない。ただもし生き方としてどちらかを選べと言われたなら、私個人は、相手を受け止め、会話に耳を貸し、色気を磨きつづける娼婦の賢さのほうに、より女性ならではの知があるように思える。女は女、男は男。それが楽しくて一緒にいるんだから。やっぱり性は無化すべきじゃない。


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(February 5, 2009)



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