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NYとアートと七つの大罪
先日、ニューヨーク在住の知人からメールをもらった。現在<PERFORMA>というほぼ無料の巨大パフォーミング・アーツ・フェスティバルが開催中で、毎日、街中のいたる場所がちょっとクレイジーなことになっていて「おもしろい」のだという。少し調べてみたところ、この基礎予算額150万ドルの低コストフェスティバルは伝説的なカリスマ美術史家で、NYの前衛劇場Kitchenのキュレーターとしても名をはせた、ローズリー・ゴールドバーグ女史が04年に立ちあげたビエンナーレ・フェスティバル。11月現在、マンハッタン&ブルックリンで100以上のアーティスト集団が、130以上のプロジェクトを、約80箇所で、2週間にわたって開催しているようだ。そしてニューヨーク在住の彼の情報によるとタイムズスクエアで行われたオープニングイベントでは「アート・リンゼイが50人のトレンチコートを着たダンサーに、携帯音楽でダンスを踊らせた」らしい。ふむ。この情報を聞いたとき、たしかに興味深いフェスティバルではあるのだろうけど、やや状況に懐疑的になった。なんだか少し、本来の意味でのアートとは異なる消費社会の匂いがするのだ。
数日後ーーこのわたしのぼんやりとした懐疑心を、さらに輪をかけて懐疑的にする底抜けな情報を得た。このタイムズスクエアのオープニングイベントに先駆けて「500人のお偉いさんだけを対象にした、会費300ドルのディナー・イベントが行われた」というのだ。しかもそのおもてなしぶりが、暴食で強欲で虚飾で傲慢で、七つの大罪ここに健在ともいうべき酒池肉林ぶり。詳細を語るなら、その宴席ではまず、貨物エレベーターいっぱいに埋め尽くされたアルコールドリンクで客はもてなされ、メインコースにはひとりあたり20000ポンドのバーベキューがふるまわれ、デザートには林檎の木が2本室内に担ぎこまれると同時に、ジェフ・クーンズの風船うさぎを模した巨大チョコレートが登場したという。しかも極めつけには、天井からつねに蜂蜜がたらたらと垂れ流されていたというからーーバカげている。
たとえディナー会費がそのままフェスティバルの運営費にまわされるとはいえ、また国家が芸術支援に熱心な欧州とは異なり、企業や個人資産家から予算投資してもらわなければフェスティバルがきりもりできないとはいえ、果たしてこんな遊蕩ディナーパーティーでお偉いさんをもてなす必要があるのあろうか? 個人的な推論をいうと、数ヶ月前にひさびさにニューヨークに降り立ち街を見てまわったときにも漠然と思ったことなのだけれど……、この街では「アートがファッション化している」ように思えてならない。つまり金がうなるほどある一部資産家が「セレブぶるための道楽」として、アルマーニのドレスやルブタンの靴を入手するのと同じように、アートというステータスシンボルが存在しているように思えてならないのだ。
だからかこのPERFORMAの取材記事も、とても知的でおもしろいプログラムも組まれているものの、どこか「びっくりニュース」的な報道をされていることが多い。NY TIMESの記事でさえ、一部、オモシロちゃんたちがオモシロいことをやってるらしいわよ、という下世話な匂いがドコカする。きちんとアートそのものを、フェスティバルそのものを、アカデミックに真摯に評価している記事というものはあまり目にしない。
そもそもオバマ大統領の専属アートコンサルタントに、女優のサラ・ジェシカ・パーカーとVOGUE編集長のアナ・ウィンターが選出されるような国である。この国では、アートがファッションとして消費されるのではなく、純粋にアートとして思考されるのは、予想以上に難しいのかもしれない。
PERFORMA >> http://www.performa-arts.org/
(November 22, 2009)
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