英国Twitter世代演劇

夕食後、肘掛椅子に腰かけゆったり何時間も本を読む。そんな時代はいまや昔。現代では夕食後、あるいは夕食と平行して、パソコンやケータイでSNSを楽しんだりネットサーフィンに興じる人のほうが多いだろう。テクノロジーの変化に応じて、生活形態や娯楽は変化する。それはあたりまえの話だ。だからたまに半日がかりの歌舞伎や、六時間のシェイクスピアなんてものを観に行くと、自分が旧石器時代にタイムスリップしたかのような感覚をおぼえる。しかもその芝居がいけてるならまだしも、あくびを噛み殺さねばならぬほど退屈だった日にゃ、もう開演後十分で、多動性障害の子どものように落ち着きがなくなる。正直じっと我慢して、どこぞの人が作りあげたものに大人しく何時間も堪えることは、Twitter、Facebook世代の人間にはかなりしんどい。おもしろくなきゃ他のことをしたいもの、さらにいえば自分でおもしろいことに参加したいもの。ねぇ、そんな「辛抱弱い」現代人でも楽しめる芝居はないの?

そんな問題意識というか不満意識を抱えて世界を飛び回っていたら、イギリスで、まさにTwitter世代にうってつけのインタラクティブ演劇が流行っているという情報を耳にした。いやいや、それは果たして「演劇」と呼んでいいものなのか。なにせ役者がいっさい稽古をしない演劇や、客が役者をやらされる演劇、あるいは客の足をただ入念にマッサージするだけの「マン・ツー・マン演劇」なんてものまであるのだ。CONEYという演劇グループなどは、自設サイトで<アドベンチャー・ロト>(www.takemeonanadventure.net. )なるプロジェクトを立ちあげ、ロトの当選者に、彼らの趣味や夢にもとづいてオーダーメイドされたアドベンチャー旅行を太っ腹にプレゼントしているという。要するに彼らへんてこイギリス人たちは、演劇というメディアを、もっとずっとパーソナルに参加できる体験に変化させつつあるようだ。

ちなみにきたる3月には、これら「Tweitter世代演劇」のうち二演目が初来日。都内でパフォーマンスを行う。ひとつは英国人俊英アーティスト、ダンカン・スピークマンによるSubtlemob(サトルモブ)というイベント。これは街頭演劇と、ライブインスタレーションと、音楽鑑賞と、あと、なんの変哲もないただの散歩をすべていっしょくたくにしたような作品。いっとき欧米を中心に”フラッシュモブ”という名のゲリライベント(SNSサイトの呼びかけで集まった人々が街頭でいきなり枕投げ大会をはじめたり、下着姿で電車を占拠したりする)が流行っていたが、それの「Subtle=控えめ」版だと思ってほしい。つまり観客は、奥ゆかしくも控えめなかたちで、街を占拠していくことになる。客は事前に指定されたMP3ファイルをダウンロードしておき、その楽曲を当日指定された場所で再生。と、そこからは音楽と物語と行動指事が流れはじめ、その指事に従って30分、町を散策することになる。MP3ファイルには2種類用意されているため、観客はおのずと半々にわけられ、ときに観客になりときに演者になる(恥ずかしいことは何もやらされないので大丈夫)。でもそれはあまりにも控えめな演技なため、果たしてその人が参加者なのか、ただの街ゆく人なのか最後までわからない。ただ実感できるのは、街がいつもより少し「愉快な場所」に見えてくるということだ。

もうひとつは、Stoke Newington International Airport(ストーク・ニューイントン・インターナショナル・エアポート)によるかなり奇抜なパフォーマンス演劇。その名も「Live Art Speed Date(ライブアート・スピードデート)」という題名のとおり、彼らは一夜の合コンイベントをアートにしたててみせる。合コンの参加者は、もちろん私たち好奇心旺盛な観客。恋のお相手は個性的な20名のアーティストたち。彼らが、ときに個室で、ときにテーブル越しに、ときに部屋の暗い片隅で、本気なのかセリフなのかわからぬ言葉であなたを熱心に口説いてくる。もちろんその演技者と現実の恋に発展することはない(と思う)けれど、ここでは参加者同士の交流イベントもいくつか仕掛けられているため、そこで未来のお相手に出逢うこともあるかもしれない。

なかなか言葉でそのおもしろさを説明することが難しい、英国初インタラクティブ演劇。ぜひ参加したいという方は、以下のサイトまでどうぞ。今日はいつになく本業に近い内容のブログでした。

■「あたかも最後の時であるかのように(サトルモブ)」

日時:3月2日 / 3月3日
会場:池袋
詳細:http://subtlemob.com/

■「ライブ・アート・スピード・デート」
ストーク・ニューイントン・インターナショナル・エアポート

日時:3月1日・2日・3日
会場:スーパー・デラックス
詳細:http://lasdtokyo.wordpress.com/live-art-speed-date/

(February 27, 2010)



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